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 暖かくて気持ちがいい、ふかふかの羽根布団。頭の方も布団に負けないくらい、ふかふか、ふわふわの半ボケ状態で夢の中を漂っていた。この些細な、でもたまらなく幸せな時間を愉しんでいたのに、耳元で変な音が聞こえてきて、強制的に現実側へと意識が戻されてしまった。
 ブルブルと体に響く振動音。寝ぼけた頭のせいで、それが携帯の音だと分かるまで数秒かかった。
 ――そっか、マナーモードにしたままだっけ。
 布団から手を伸ばしてサイドボードの辺りを探ってみる。けれど、手ごたえはなかった。わざわざ起き上がって探す、ってのは今の気分的に面倒くさい。
 あとで誰か確認して、かけ直せばいいや。
 手を引っ込めて、布団をかぶり寝返りを打つ。その間も携帯はブルブルと震え続けていた。
 ずいぶん頑張るなあ。誰だろ。
 休日の朝っぱら電話をかけてきそうなのは栞ぐらいしか思いつかないけれど、栞の場合はこんなに待ったりしないで、すぐ切って留守電残すタイプだから、たぶん違う。
 ううん、と唸りつつさらにしっかりと布団をかぶる。着信音だったらこれで音は聞こえなくなるのに、マナーモードの小さな小さな振動音は体に、というか骨に響いてくる。普通の着信音よりも、こういう振動音の方が気に障ることもあるってことを、今はじめて知った。
 いいかげん、しつこい。諦めて欲しい。というか、諦めろ。
「もう分かったって……出ればいいんでしょうが出れば!」
 嫌々ながらも体を起こして、床に落ちていた携帯を拾い上げた。その時、画面に表示された発信者名を目に入れた瞬間――なんというか頭のてっぺんから一本筋を抜かれたとでも言うか――全身から一気に力が抜け、そのままバランスを崩して、ずるずるとベッドの上から滑り落ちた。
 それでも振動音は止まない。まるで、出るまで絶対切らないからなと脅しをかけてられている気分だ。起き上がる気力も湧いてこなくて、床に転がったまま、ぽちりと通話ボタンを押した。
「もしもし……」
「やっと出たね。望ちゃん、いつまで寝てんのー?」
 ああ……この爽やか、かつ、明るい声が心底鬱陶しい。
「たくみ君」
「うん、おはよ」
「おはよう。今日土曜日だよね。お休みだよね」
「そだね」
「休みの日にいつまで寝てようと私の勝手じゃない」
 会話しながら、ちらりと時計に目をやった。
 なんだまだ8時半じゃない。そんな遅い時間でもないよ。
「何言ってんの。今日は学校来るようにメールしておいたじゃん。まさか読んでないとか言わないよね?」
 ははは。そのまさかだ。送信者名が湯川拓海のメールは全部無視したよ――という、喉まで出かかった言葉をごくりと飲み込む。
「……いそがしくて、見る暇なかった」
「返事するのに妙な間があったけど」
 即座に胡散臭げな声が返ってきた。気のせいじゃない? と適当に言葉を濁す。
「つか、メール読んでないから分かんないんだけど、なんで土曜日に学校?」
「廃部対象組が休日もやりたいっていうから、とりあえず俺達も監視ででなきゃいけないしー? 予算会議の準備もあるしー?」
 頭の悪そうな、軽い口調が携帯から響いてくる。すごい。声だけでこんなに人をイラつかせるなんて。わざとやってるところがまた、余計に苛立たしさ倍増だ。
「……ああそうなの。でも調理部は土日活動する予定ないから。私、関係ないよね。じゃ、頑張って」
 社交辞令的挨拶を告げて電話を切ろうとしたら、「あー? そういうこと言うわけー?」と、一際大きな声が耳元で響いた。
「主人の俺達が休日返上で働かされてるのに、下僕の望ちゃんが惰眠をむさぼるなんて許されるわけないんじゃーん」
「下僕とか言うな!」
「じゃあパシリ」
「大して変わらないじゃないの! 大体、そのためだけにわざわざ学校来いって?」
「せっかく学校来たんだから、何か作ればいいじゃん。味見してあげるよ?」
「あのね。うちは顧問が居ないと調理室使えないの。休日使用届けも出してないし、無理、無茶、無謀」
「ああそれなら俺が昨日出しておいたから。染井センセにも連絡済」
 驚きのあまり、がっと喉が詰まる。ごぼごぼと変な咳をしつつ、声を絞り出した。
「なん……!」
「日本語喋ろうね、望ちゃん。っていうか、染井センセ、学校もう来てるよ」
「えっ……ごっ……?!」
「8時前から来てるって言ってたから。上原まだかなあー、俺早く来すぎちゃったかなあーって、ニコニコしながら待ってるのに。望ちゃん、あの人のこと見捨てるんだ。すっげ残酷、冷たい、非人間」
 それはまるまるお前のことだ。
 っていうか、染井先生8時前て! 本当はりきりすぎですからそれ!
「もう30分待ちぼうけだね。望ちゃんの仕度時間次第では、下手すると1時間以上待つことになっ――」
 ぶちりと携帯のボタンを押し、会話の途中でぶった切った。
 パジャマを脱いで制服に着替え、階段を駆け下りて洗面所に直行。多少寝癖がはねていたけれど、直してる時間はないから水をつけて誤魔化し、次に台所に行って冷蔵庫にあった牛乳を我ながら実に男らしくパック飲み。そしてに台の上にあったロールパンを口に頬張りつつ、呆気に取られてるお母さんを尻目に家を飛び出した。
 所要時間、約10分。いつもは朝の仕度1時間ぐらいかかるのに、人間やろうと思えばなんでもできるというのは本当らしい。だけど、女としては確実に終わってる。
 外は初秋の朝らしく、暑くもなく寒くもなく。散歩にはちょうどいいくらいの季候だった――が、学校まで全力疾走する私にとっては、そんな悠長に秋の風情とか感じてる場合じゃない。拓海君への呪いの言葉を吐きつつ走ったりしたものだから、相当な形相だったようで、道の途中ですれ違う人にぎょっとした表情で見られたりもした。
 本当に呪えるものなら呪いたい……!
 恥も外聞も投げ捨てた努力のおかげで、なんとか9時前には学校に到着できた。出来たんだけれども。
「う、上原、おはよ……」
 こんなに必死になって急ぐ羽目になった原因の一つ、染井先生が、ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返す私を見るなり、少々怯えたような表情をしてみせたのには大変乙女心が傷ついた。
「俺が早く来すぎただけで、そんなに無理して急がなくてもよかったのに」
「そ、んなわけにも、いかないですから」
 乱れた呼吸の合間に返事を返しながら、作り笑いを浮かる。
 そりゃあ先生は遅刻を許してくれるだろうけど、呼び出した拓海君が許してくれるとは思えない。爽やかな笑顔でねちっこく嫌味を言われそうだ。
「……うん、絶対言われる」
「え? なに?」
「いいえなんでも。それより先生、今日部活やるって、私は言ってなかったと思うんですけど……?」
 一緒に調理室へ向かいながら、今日呼び出された原因について探ってみると、拍子抜けするほどあっさり答えが返ってきた。
「うん、でもちゃんと湯川から届けを受け取ったよ。上原が頼んだんだろ?」
 微塵も頼んでない。
 やり手の詐欺師か、あの男は。
「上原やる気だよなー」
「いや……やらざるを得ないというか」
 廃部になりたくないっていうより、今日のは完全に脅されたまでで。先生も先生だ。少しは疑うなり、私に確かめるなりしてください、お願いだから。
 こちらの気持ちも知らずに、先生はにこにこと笑顔を浮かべている。けれど、調理室の鍵を開けようとしたとき、その笑顔は消え去ってしまった。
「変だな……上原、ちょっと待って」
「先生?」
「鍵、あいてる……」
 ほら、と先生が扉に手をかけると、それはカラカラと軽い音を立てながら横に開いた。
「あ、すいません、昨日閉め忘れた、かも……?」
「いやそんなはずないよ。夜に警備員が巡回してるから、閉め忘れがあったら代わりに戸締りしてくれるはずだし」
 そう言う先生の表情はかなり険しくなっている。
 開いた隙間から覗き込んでみると、部屋の中は静まり返っていて、視界の届く範囲に人の姿はなかった。けれど、死角になっている部屋の隅とか、どこかに隠れている可能性もある。たとえばそう、昨日みたいに。
「――ん?」
「どうした上原?」
 昨日とすごく良く似てないか、この状況。
 ……いやでも、昨日の今日で、そんな。まさか。
「や、ややややっぱり私の閉め忘れですよ先生!!」
「でも警備い……」
「警備員さんもうっかり見落としちゃったんじゃないかな! うん絶対そうだ、そうです間違いない! ほら、見る限りどこも荒らされてる様子はないし」
 見てください、と一瞬扉を開いて、中の様子を示し、すぐさまぴしゃりと閉じた。
 これで納得する訳ないよな、と思ったとおり、先生は眉間に皺を寄せたままだ。
「いや、でも上原」
 変だよ、となおも反論しようとした先生の両肩をがっしりと鷲づかみ、顔を間近に寄せる。
「……間違いないったら間違いないんですよ、先生」
 自分でもびっくりするくらい、喉から想像以上にドスの利いた声が出た。私が驚いているくらいだから、先生はもっと驚いて――というか、腰が引けている。ああ。ますます『女らしくないやつ』って決定付けたね、これは。
「とにかくここは私に任せてください。大丈夫、もし泥棒でも居たら叫び声あげて先生呼びますから。うん、本当に。大声には自信あるんです。じゃ、帰るときにまた声かけに行きますんで!」
 まだ何か言いたげにしている先生の体をくるりと反転させ、そのままぐいぐいと背中を押し、部屋から追い出した。もちろん扉をしっかりと閉じるのも忘れない。
 扉を背にして、ゆっくりと、特大のため息を吐く。そして誰も居ない――はずの調理室内をぐるりと見渡した。
「……鈴村、いるでしょ」
 しん、と室内は静まり返っている。
「先生もう行ったから」
 付け加えると、ガタ、と音を立てて掃除用具要れの扉が開いた。その隙間から、ぎょろりと黒目だけが見え――
「ぎゃーッ!!」
「どうした上原っ! やっぱり泥棒なのかっ?!」
 騒々しい足音と共に染井先生が勢いよく飛び込んでくる。そしてその手には何故か黒板消しが握られていた。それで戦うつもりか先生。
「上原、すごい叫び声がしたけど!」
「叫んだのは認めますけど! それは……その、たぶん」
「たぶん?」
「ゴキブリですゴキブリ! 急に出てきたからびっくりして。大騒ぎしてすみません、片付けましたのでご心配なく!」
 駄目押しで、これでもかという風に爽やかに笑ってアピールしてみた。実際は冷や汗が背筋をだらだらと流れていたんだけれども。
 そうなの? と呆気に取られている先生にお礼とお詫びを連発しつつ、もう一度部屋から押し出して、ゆっくり10数えた。同じことを繰り返さないよう、完全に足音が遠ざかったのを確認する。多少声を荒げても聞こえないはず、これなら大丈夫、と確信してから、ぎろりと掃除用具入れを睨みつけた。
「怖い! なんなのちょっと! さっさと出てきてよ!」
 今度はためらいなく扉が開かれた。
 もちろん出てきたのは鈴村聡二朗、その人だ。掃除用具入れから出てくるなんて間抜けな登場のくせに、妙にふんぞりかえっている鈴村は――生まれつきのものなのか意図してやっているのかは不明――愛想なんて微塵もない態度で、ふんと鼻を鳴らした。
「来るのが遅い」
 開口一番それか。もっと他に言うことあるだろうが。
 うんざりする私の目の前に、鈴村はさも当然というように右手を差し出した。
 は? と疑問に思いながらその手のひらを見つめる。そして、数秒後に意味を理解した。
「買ってないよ」
「なんだと」
「ダッシュで来たからコンビニに寄る時間はなかったの」
 むう、と鈴村が不機嫌そうに口を閉じる。眉間に深い皺を刻んで、なにか考え込むような仕草をしたあと、唸るように言った。
「それじゃ、お前は一体なんでここにいるんだ」
 おぉい。私の存在意義は、あんたにお菓子を買ってきてあげることだけか。ていうか、そもそも――
「あんたたちが呼んだんでしょうが」
 はあっと大げさにため息をついて、手に持っていた鞄を乱暴に調理台の上に置いた。
「呼んだ?」
「そうだよ。染井先生の方にまで手回されてるし、来ないわけにはいかないじゃない」
「呼んだって誰が」
「だから、拓海君が」
「た、くみ、君?」
「うん、そう、携帯で」
「携帯?」
 逐一、問い返される。
 んん? なんか話がかみ合わないな。
「聞いてないの? 校内放送使って呼び出しかけるの、そろそろ無理が出てきたから携帯番号教えろって言われて、アドレスと番号教えたんだよ?」
 鈴村の目がすっと細くなる。そして眉間の皺がますます深くなった。
「聞いてないな」
 低い、妙に迫力のある声でぼそりと一言。それきり再び口を閉じてしまった。腰に手を当て、視線を窓に移し、不機嫌の極地という表情になっている。
 あ、もしかしてこれは。『勝手なことして。俺の計画に狂いが出てしまうじゃないか』的な、そういうのか?
「言い忘れたんだと思うよ。ほら、昨日鈴村だってバタバタしてたじゃない」
 なんで私がフォローしてやらなきゃならないんだと思いつつ、低姿勢で言い訳を並べてしまう自分が恨めしい。けれど、鋭い視線を飛ばしてくる鈴村はもっと恨めしい。
「……私を睨むのやめて下さいませんか。つか、怒りの矛先は私じゃなくて、元凶の拓海君に向けてほしいんだけど」
「俺は怒ってない」
「睨みながら言ってる時点で、説得力が無さすぎなの」
「上原」
「なに」
 思わず身構える――が。
「腹が減った」
「方向転換、突然すぎでしょーっ!」
 脱力感のあまり、思わず調理台に手をついた。
 もう、真面目に対応するのがホント馬鹿らしくなってくる。こっちの気も知らずに、鈴村は鈴村で「貧血か?」なんて呑気なことを聞いてくるし。
「……大体、何か作ろうにも、砂糖なんて昨日のアレで全部駄目になっちゃったし」
 思い切り嫌味と皮肉を込めて言ってやると、鈴村は戸棚から砂糖入れを取り出し、私の目の前でふたを開けた。昨日床にぶちまけられて空っぽになってしまった中身はきちんと補充されている。これは、と鈴村を見れば、屈辱極まりないとでも言いたげな表情で頷きが返ってきた。
「ええと、どうも」
 ありがとう、ってのもおかしい気がして――もともと鈴村が原因なんだし――軽く頭を下げておく。
「でも、砂糖だけじゃなく、他の材料もほとんど無いんだって。今週使い切る分しか買い込んでおかなかったし」
「どうしてもっと買っておかなかったんだ、計画性が無さすぎじゃないのか?」
「一週間分の材料だけでどれだけ重いと思ってんの! あんたの大量消費分も入れたら私の腕が抜けるわ! それに本当は明日買出しに行って、月曜日には準備万端っていう予定だったんだからね。計画性無いとか、怒られる筋合いはないっての! 文句言うなら明日の買出し手伝いなさいよ!」
 怒りにまかせて一気に言い切ったせいで、ぜいぜいと息が乱れてしまった。
 なのに怒りの源である当の鈴村は、私が文句を言っている間も言い終わった後も、表情を変えないまま、じぃっと私の顔を見ている。
 いやだ、なにこの『はあ? なにこいつ一人で興奮して馬鹿じゃね?』みたいな冷め切った空気。なんでもいいから言い返してくれないと私一人馬鹿みたいで、すごく恥ずかしいんですけど。
「――き、昨日あんたが言ってた、砂糖水? ってやつならいくらでも作ってやるけどね!」
 いたたまれなくて、思いついたセリフを誤魔化しまぎれに言うと、
「あれは緊急用だと言っただろう」
 と、鈴村は至極嫌そうに首を横に振った。
 言い返してくれたことに内心ほっとする。でも次の瞬間、なんでほっとしてるんだよ、って自分に突っ込みを入れた。言い返されて喜ぶって。実はM体質なのか私は。
「上原、なにを呆けてる」
「な……なんでもない! それより、今すぐに作れる料理なんてないよ。残ってる材料把握して、何が作れるか考えるだけでも時間かかるし……そっちは、なにか買ってこなかったわけ?」
「お前が買ってくると思ってた」
「鈴村あんた、完全に私のこと下僕だと思ってるよね……!」
 二度目の脱力感が襲ってくる。その上、眩暈までしてしまった。倒れそうになるのを踏ん張ってこらえていたら、鈴村が「やっぱり貧血か」とか言ってきたりしたもんだから、無性にぶん殴りたくなってしまった。
 拳にぐっと力を込めてなんとか怒りを押しとどめ、鞄の中から携帯を取り出して、アドレスと番号が記載してあるプロフィール画面をずいと鈴村の眼前にかざした。
「どうぞ。鈴村の優秀な頭脳なら、見ただけで一発で覚えられるだろうけど、この際だから一文字一文字、間違えないよう、ゆっくりゆーっくり登録しててよ。なにもしないよりは気がまぎれるでしょ。その間に何か作れないか、ちょっと考えてみるから」
 言い終わらないうちに、手の中の携帯から場違いに明るい着信音が鳴り始めた。鈴村の目がすうっと半眼になる。
「拓海だな」
 慌てて画面を確認すると、確かに『湯川拓海』の文字が表示されていた。鈴村を多少気にしつつ通話ボタンを押すと、こちらの応答を待たないうちに声が届いた。
「望ちゃん、もう学校来てるよね。そこに聡二郎いる? いるよね。代わってくれない?」
 いつもよりやや早口、のような。急いているように聞こえる。
「代わってくれって」
 再び携帯を差し出すと、鈴村は胡散臭いものを見るような様子で受け取った。そして一言二言相槌を打っていたかと思うと、いきなり表情を一変させた。
「どういうことだ」
 恫喝するような声音で言われ、思わず身をすくませる。
 大きな声ではなくて、低い静かな怒声。それが体の芯まで響く。怒られているのは私じゃないけど、思わず逃げ出そうかと思ったぐらいだ。
 それから短いやり取りをした後、鈴村は舌打ちと共に携帯を切って、私に手渡した。
 何があったかは――教えてくれないだろうけど、でも、気になる。すごく気になる。
「なにかあったの」
 駄目もとで聞いてみると、鈴村は一瞬迷ったように視線を窓の方へ移し、またすぐにこちらを向いてから「軽はずみに口外するなよ」と釘を刺した。
「美術部と剣道部の部室が荒らされたらしい」
 ――まじで。
 拓海君のタチの悪い冗談とか、嘘とかじゃないよね?
 問い返す意味で眼を見開くと、こちらを見つめる鈴村から無言の頷きが返ってきた。

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